明日の東播海岸を考える懇談会

第11回懇談会

日時 : 平成11年 6月22日

場所 : ホテルキャッスルプラザ

項目

垂水百年のあゆみ

  • 垂水地区の人々にとって「東播」という名前は馴染みがない。それよりも、「播州」や「東播磨」とするほうが通じるような気がする。
  • 東播海岸の海岸の状況は、須磨以東と明石以西とで全く異なる。特に、舞子公園から大蔵谷までは潮の流れが速い。また、西舞子の海岸は湾曲し北へ凹んでいるために潮が舞い込んでいる。舞子の名前の由来は「舞い込む」からきたという説もある。
  • 近畿地建姫路工事事務所が作成した東播海岸の図面等の中で、塩屋と須磨区との境界に「堺川」とあるが、「境川」の間違いである。
  • 昔は車内からよく海が見えたが、現在はマンション等が建ち並び、海の見える場所(例:塩屋駅~須磨駅)が非常に少なくなった。このような海の見える場所は、心の慰めになるので残しておきたい。
Q 海神社の祭りは非常に有名であるが、他に地域らしい祭りはあるのか?
A 山田村(今の西舞子)に舞子六神社があり、海神社と同じような祭りを行っている。
Q 阪神大水害(昭和13年)により、山陽線が10日間不通になったのは、土砂崩れが原因だったのか?
A 土砂崩れが原因である。現在の須磨浦公園あたりの土砂崩れがひどかった。
Q 山陽本線で海の際を走る場所があるが、波による被害は考えられないのか?
A 「垂水百年のあゆみ」にある潮の流れの図面を見るかぎり、潮の影響はあまりない。むしろ、山からの土砂の方が危険である。

沿岸域問題と海陸一体の環境創造

  • 人間の都合で利用され、その影響が最もあらわれるところが海岸である。また、海岸を海岸だけでとらえるのではなく、海と陸とを一体の空間としてとらえる必要がある。
  • 大阪湾の奥(淀川、大和川、武庫川、須磨海岸)から流れ出たゴミ等は、紀淡海峡付近まで流れ、さらに紀淡海峡を通って大平洋へと流れ出す。また、ミッドウェイ島でアホウドリが海面に浮いているゴミをエサのイカと間違えて補食し、それを子供に食べさせたため、子供が死んでしまうという問題が指摘されている。流れ着くゴミの内、40%が日本から流れ着いたものといわれている。
  • 環境調査を行う際、そこにある植物の種類、特に希少種の存在と保全の必要性のみ記述する。それは間違いであり、役に立たない。希少種が存在する為にはその周辺の環境が大きく作用する。こういう相互関係を踏まえた上で希少種の存在を認識しなければ、調査の結果は何の役にも立たない。
  • 多様な海岸線形態(岩場、干潟、砂浜)が残っているような場所には多様な生物層が形成されている。このような場所こそ貴重であり、保全・修復を行う必要がある。
  • 環境影響評価報告書で欠けているのは、現況と対策との間の関連づけがないことである。分析していることはレッドデーターブックに載っているかということだけであり、このようなことではいつまでたっても生物環境はよくならない。
  • 環境アセスメントの問題点は、環境特性調査はプロジェクトが発生したときだけ実施されることである。海域、海岸は、我々にとって環境財である。このような貴重な財産を守り、我々の財産目録をつくるために、環境特性は常に把握しておく必要がある。
  • 情報の公開のやり方にも問題がある。例えば、環境影響調査報告書は解説が全く無く、専門家しかわからない。そういう意味では情報の公開になっていない。利害関係者(漁民、潮干狩りに行く人、海岸線の景観を楽しむ人)を含めて、みんなが環境のことをよく知る、知るための条件整備をしていくことが重要である。
Q 淡路島の由良はまだきれいな所と思っていたが、相当なゴミが大阪湾の周辺から流れてきている。これは日常的なものなのか。それとも台風等の影響があったからなのか?
A 日常的である。また、梅雨の時期はひどい状態である。これまでにコンピューターシミュレーションを行ったところ、ビニール袋は1週間かけて淡路島にたどり着き、ゴムボールは4、5日でたどり着いた。しかし、たどり着いたのはまだいい方で、実際はたどり着く前に沈んだり、紀淡海峡から出ていくものが多い。都市側の住民に現状を説明し、環境意識を持ってもらうよう努めたい。
Q 広い範囲で海岸の清掃活動をするにあたり、都市生活者にも海岸の現状を知ってもらう必要がある。そこで、現状を知ってもらうためうまく活動する知恵があれば教えてほしい。また、過去の事例があれば教えてほしい。
A 子供たちに対しての環境教育を行い、影響を受ける側からの立場で問題を考えさせる。そのためには、影響を受ける側の情報を適切に与える必要がある。また、ゴミが溜まることが問題ではなく、ゴミが溜まることによりさらに別の影響を及ぼすことを知ってもらいたい。
Q 今、問題になっているゴミ問題(放置、分別)をどのように考えていけばいいのか?
A 放置ゴミ、散乱ゴミについてのとらえかたは二つある。
一つは、市民一人一人の問題ととらえる。これには、一人一人の問題意識を喚起する。
二つは、社会全体が捨てざるを得ない状況を作っていることにある。これには、捨てざるを得ない時にうまく捨ててもらう仕組みをつくる。

東播海岸環境調査結果報告

目的
  • 東播海岸における保全施設周辺の環境変化とその影響を把握する。
  • 現況の自然環境を把握する。
調査概要
1.蛍光砂の追跡調査

調査地点 … 藤江地区、松江地区

投入日 … 1998年1月初旬

調査日 … 1998年9月11日(1回目)

長期放置後の移動傾向の把握 … 1998年9月29日(2回目)

2.保全施設の付着物調査

調査地点 … 海岸から沖合への測線調査(5箇所) / 松江、藤江、八木、西島(2箇所)

保全施設の付着物調査(3施設) … 松江地区(突堤)、八木地区(離岸堤)、西島地区(突堤)

調査時期 … 今回は夏季に実施(過去の調査:早春、冬季)

3.植物調査

調査時期 … 今回は夏季に実施(過去の調査:秋季)

結果
1.蛍光砂の追跡調査

藤江地区では、蛍光砂はほとんど保全施設内に留まっている。また、松江地区でも保全施設外での確認は僅かであった。

2.保全施設の付着物調査

全体で海藻類33種、底生生物46種、魚類26種を確認した。

3.植物調査

ハマオモト、ノジギクなどの希少種を含め、203種を確認した。