足羽川ダムについて

ダム建設事業審議委員会

 建設省では、公共事業の効率的な執行および透明性の確保の観点から、平成7年6月に「大規模公共事業に関する総合的な評価方策検討委員会」を建設省内に設置し、大規模な公共事業に関しその事業の目的、内容等の事業評価を一層透明性、客観性を確保して行う方策についての検討を進めてきました。

 特にダム・堰事業については、大規模な事業であり、その建設に長期間を要し、また、地域に与える影響が大きいにもかかわらず、建設省の他の事業に比べて、地域住民の意見を聴取する都市計画のような手続きが制度上十分でなかったとの指摘がありました。この為、個々の事業毎に当該事業の目的、内容等を審議する「ダム等事業審議委員会」を設置し、地域の意見を的確に聴取する新しい評価システムを試行することとしました。

足羽川ダム建設事業審議委員会

 これを受けて、近畿地方建設局長は足羽川ダム建設事業に関しても、事業の目的、内容等の透明性、客観性の確保を図る観点から、学識経験者、知事、関係市・町長、県議会および関係市・町議会の議長で構成された「足羽川ダム建設事業審議委員会」を平成7年9月に設置しました。

 この審議委員会は、平成7年9月22日に第1回審議委員会が開催されました。
以来約2年間にわたり審議が重ねられて委員会としての意見がとりまとめられ、平成9年9月5日に審議委員会委員長から近畿地方建設局長に対し「足羽川ダム建設事業についての意見」として提出されました。その内容は、以下のとおりです。

平成9年9月5日

近畿地方建設局長
竹村公太郎様

足羽川ダム建設事業審議委員会
委員長 市橋保

「足羽川ダム建設事業についての意見」の提出について

足羽川ダム建設事業審議委員会において審議した結果、別添のとおり、足羽川ダム事業についての意見が取りまとまりましたので、足羽川ダム建設事業審議委員会設置・運営要領第5条に基づき、意見を提出します。

審議の結果(意見)

 審議の結果、審議委員会では以下のように意見を申し述べる。
 足羽川の治水、利水(生活用水、工業用水、農業用水)ならびに環境(河川美化)を考慮すれば、足羽川にダム建設は必要である。
 しかし、現在計画している足羽川ダム(美山町蔵作をサイトとする旧足羽川ダム計画)については、審議委員会では次の意見が出された。

  1. 足羽川ダムの建設は、住民を水害から守り、流域への潅漑用水の供給、生活・産業活動に不可欠な水資源確保のために必要である。
  2. 現行立地での計画推進には、大きな犠牲を伴い、地元同意を得ることが困難と思われるので、適当とは認めない。
  3. ダム建設による水没世帯が極力少なくなるようダム規模の縮小、河川改修等、事業者は最善の努力をするべきである。
  4. ダム建設には下流流域の受益者の協力が特に重要である。
  5. やむを得ず水没世帯が生じる場合は、事業者と受益者は納得のいく代替地の提供等十二分な補償を講ずるべきである。また、関係市町村にわたる広域観光開発等を強力に実施する等地域振興をはかるべきである。

よって事業推進にあたっては、今後とも地域住民の意見を十分に聴取し理解を得るとともに、足羽川の治水、利水、環境の重要性ならびに計画発表から40年近く経過した現状に鑑み、委員会の意見を十分勘案され、早急にその可能性について検討されたい。

審議委員会の意見を受けての近畿地方建設局の方針

 審議委員会からの意見を受け、近畿地方建設局では次のような方針で検討を行いました。

 足羽川ダム建設事業審議委員会からの「足羽川ダム建設事業についての意見」を受けて

平成9年11月19日 近畿地方建設局

建設省は、足羽川ダム建設事業審議委員会からの意見を尊重し、足羽川ダム建設事業について、今後以下の方針で検討を行うこととする。

  1. 治水計画については、現在の足羽川ダム計画に加え、これまでに検討し公表してきた代替案の他、ダム建設による水没戸数を極力少なくする可能性について検討すべきとの同審議委員会の意見を踏まえた代替案も検討する。
  2. 水道用水・工業用水については、その確保の方法等について、建設省、福井県、水道事業者及び工業用水事業者が共同で、治水計画の代替案検討と連携して検討を進める。
  3. 調査・検討ののち、その結果を公表し、福井県知事、関係市町村長、関係住民等の意見を聴いた上で、今後の足羽川ダム建設事業の進め方について判断することとする。

※「現在の計画」は「美山町蔵作をサイトとする旧足羽川ダム計画」を指します