阪神・淡路大震災の経験に学ぶ 震災時における社会基盤利用のあり方について

はじめに
 平成7年(1995年)1月17日に発生した阪神・淡路大震災は、これまでわが国が経験したことのない大規模な都市型震災であり、6,432名の尊い命が失われました。
 この震災では、道路、河川、港湾等の社会基盤施設(インフラストラクチャーとも呼ばれますが、以下では「社会基盤」と称します)も大きな打撃を受けました。その結果、道路であれば、利用できた数少ない幹線道路に自動車が集中して大渋滞が発生し、人命救出や消防の部隊の現場到着が大幅に遅れたり、その後の被災地への救援物資(水、食糧、日常用品等)の輸送に大きな影響を与えました。また、水道管の破断等による断水は、消火用水不足による延焼拡大を引き起こし、その後の飲料水不足や水洗トイレの使用不能にもつながりました。
 国土交通省では、被災直後から関係機関と協力して、被災した社会基盤の復旧・復興に全力で取り組んできました。また、震災から得られた社会基盤に関する教訓についても、技術的な面から調査研究を積み重ね、社会基盤の耐震性強化等にも取り組んできました。
 一方、阪神・淡路大震災から年月が経過し、震災体験の風化が危惧されていることから、平成12年度には、改めて幅広い観点から社会基盤に関する震災の教訓について検証を行いました。すなわち、震災後に発行された様々な文献(書籍、新聞、雑誌、報告書等)から、教訓とすべき被災当時の社会基盤に関する実体験や、災害から市民生活を守り、被災しても市民生活を支えられる社会基盤とするための工夫に関する記述などを収集しました。また、同様の趣旨のアンケート調査を、被災された住民の方々、被災された企業、救助活動に従事された方々、ボランティアに参加された方々など、様々な立場の方々にお願いし、貴重なご意見をお聞かせいただきました。ご意見をお寄せいただいた方々には、厚く御礼申し上げます。
 これらの文献調査やアンケート調査による成果は、国土交通省の今後の行政に活かしていくことは当然ですが、同時に、震災時に社会基盤を上手に利用する教訓となりうる体験については、広く市民の方々に発表することが重要であると考え、本冊子を作成しました。特に、被害を減らすため、ぜひ知っていただきたい事項を中心に作成しましたので、これを読んで、今後、大きな地震に遭遇したときに、どのように社会基盤を利用するべきかを考えていただければ幸いです。

平成14年(2002年)1月
国土交通省 近畿地方整備局 震災復興対策連絡会議

このホームページについて

第1章 死者を減らすために

第2章 水の困らない避難生活のために

第3章 情報を活用するために

国土交通省 近畿地方整備局