九頭竜川流域誌


2.5 雲川ダム

(1) 概要
 
雲川ダム
雲川ダム
真名川総合開発では、真名川の支川雲川に、砂防ダム兼発電用のダムを築造して、開発効果の増大を計ることが基本的な計画の一つとして取り上げられた。雲川の上流は、温見川、熊河川に分かれ、いずれも水源は福井県と岐阜県の県境に発し、この2川が西谷村字巣原地先で合流して雲川となる。その流路は約9kmの中小河川である。その地域は山地が極めて急峻で、樹木は主として広葉樹からなり、針葉樹の少ない地域であり、加えて水源地帯には焼畑跡が多く、甚しく荒廃している。このため、降雨時や融雪期には河川は氾濫し、年間の流砂量は1km2当たり2,240m3に達する。この流出土砂を防止するためにダムを築造し、併せてその天端の標高を笹生川ダムの満水位以上にすれば、雲川の流水も笹生川のそれと合せて発電用水として利用することが可能となる。これによる発電量の増加は、昭和15年(1940)より27年(1952)までの過去12年間の測水記録によれば、笹生川のみによる発電量と比較して、3,000〜4,000万kwhの増加をみることができる。また、雲川よりの水路と、笹生川よりの水路を発電所水槽で連絡することにより、豊水の際、発電機の運転を休止したときには、雲川の取水を笹生川貯水池に導くことも可能となり、その貯水は渇水期の農業用水の補給に大きく貢献することが期待できる。
  以上のことから、砂防費および電気事業費の共同負担による雲川ダムの築造計画が決定され、昭和27年(1952)より基礎調査が始められ、昭和32年(1957)6月に竣工した。
 この砂防兼発電用の雲川ダムは、三成ダム(昭和29年竣工、島根県・建設省)、上椎葉ダム(昭和30年竣工、宮崎県、九州電力)、鳴子ダム(昭和32年竣工、宮城県、建設省)などとともに日本におけるアーチダムの黎明期に築造されたダムの一つである。


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