九頭竜川流域誌


4.2 鳥類

 九頭竜川流域は、流域面積の約78%を山地で占めており、森林性の鳥類にとっては比較的に恵まれた生息環境を保持している。しかし、流域のもつ地域性、気象条件などすべてが鳥類にとって恵まれた環境でなく、多様性に乏しい一面もある。すなわち、平地における原野が少なく山の傾斜が急なことから鳥類の生息適地となる林縁効果に乏しく、河川敷においても砂礫地が少なく、沼沢などでは水生植物群落が少ないことなどから、種の多様性といった面から必ずしも良好な生息環境とはいえないところもある。
 また、冬期において多雪地帯の多いことも鳥類の飢え、天敵、狩猟などが大きな要因となって、個体数の維持という面からは厳しい環境となっている。したがって、留鳥性のものは、海岸域の森林や温暖な地方へ移動する。
 九頭竜川流域の鳥類としては、白山山系とこれに連なる県境付近の山岳部を中心として、メジロ、ホホジロ、シジュウカラなどの森林性の鳥類が生息している。丹生山地、南条山地、越美山地ではまだかなりの自然林も残されており、キビタキ、オオルリ、センダイムシクイ、ヤブサメ、ヨタカなどの夏鳥や、ツグミ、アトリ、カシラダカなどの冬鳥、ウグイス、メジロ、カワラヒワなどの漂鳥の渡来経路や生息地の重要な地域となっている。
 九頭竜川流域で希少鳥類として天然記念物または特殊鳥類に指定されているものは、タンチョウ、イヌワシ、マガン、ヒシクイ、オジロワシ、オオワシである。
 福井県に生息する鳥類および九頭竜川流域の河川内にも生息または飛来すると推定される鳥類は合計51科254種で、その内訳は、留鳥62種、漂鳥15種、夏鳥54種、冬鳥75種、旅鳥35種、迷鳥13種である。そのうち繁殖するものは81種、繁殖する可能性のあるものは23種である。
 九頭竜川および日野川の建設省直轄管理区間における平成5年度の調査では、14目34科122種の鳥類が確認された。代表的な種としては、冬期にカモ類・カイツブリ類・カモメ類などが水面を利用する。また、ガン類・ワシタカ類が採食地・休息地として中州や高水敷を利用している。福井大橋下流の中州の低木林がサギ類の営巣地に、鳴鹿橋下流の河原がイカルチドリ・コチドリの営巣地となつている。
 確認された特定種は、次のものである。
 国指定天然記念物でかつ希少種のものとしては、コクガン・マガン・ヒシクイの3種である。希少種としては、チュウサギ・コハクチョウ・オシドリ・コアジサシ・オオジシギの5種である。
 危急種としては、カンムリカイツブリ・チュウヒ・ミサゴ・オオタカの4種で、このうちオオタカは絶滅法指定種である。
 その他、「緑の国勢調査 自然環境保全調査報告書 昭和51年3月」における「すぐれた自然の調査」対象物としては、ヤマセミ・カワセミ・カワウの3種が挙げられている。

カワセミ マガモ
カワセミ マガモ


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