◎当日は19名の委員が参加し、福井県農村計画課から「農業用水の役割と現状」、北陸電力株式会社から「九頭竜川水系における水力発電所の現状と今後の動向」について説明した後に、それぞれに対して意見交換を行いました。さらに、河川管理者から「河川の維持流量」について説明した後に、意見交換を行いました。



1.農業用水の役割と現状

「農業用水の役割と現状」に係わる資料について福井県農村計画課から説明を行いました。説明した主な内容は以下に示すとおりです。

@ 農業用水の役割
A 利水の方法
B 県内の利水状況
C 農業用水の環境
D 水利使用の状況

以上の説明を実施した後に、次のような質問や意見が出されました。


1.農業用水の還元(水収支)の実態として、どの程度把握しているのか?
→水収支は非常に把握しにくく、これに関するデータはないのが現状。

2.パイプラインの中は、生物が生息できる環境か?また、移動は可能か?
→水圧にもよるが、パイプラインの中は、生物が生息あるいは移動できる環境でないと考える。ただし、排水路は開水路となっており、小川や水田を結ぶ機能(ネットワーク)を有するため、生物が移動できる方策を検討している。

3.水田がもつ多面的な機能を活かしながら、治水・利水・環境の調和をはかるべき。

4.ダムによる水量の安定供給が確保されている今日では、水道水として"質"が求められるようになっている。これには、河川の自浄作用の機能を保全していくことが重要。


河川への還元説明画像 多面的な機能・説明画像



2.九頭竜川水系における水力発電所の現状と今後の動向

「九頭竜川水系における水力発電所の現状と今後の動向」に係わる資料について北陸電力株式会社から説明を行いました。説明した主な内容は以下に示すとおりです。

@ 発電構成比
A 九頭竜川水系における発電所
B 循環型エネルギーの活用
C 電源別CO2排出量
D 今後の動向                 等



以上の説明を実施した後に、次のような意見や質問が出されました。



5.下荒井堰下流の水量減少区間においては、従来の取水既得権にこだわらずバランスのとれた取水を行っていくべき。
→放流量については、水利権更新にあわせて協議しており、現在では発電ガイドラインに従って放流を実施している。

6.農業水利権の更新が10年毎に行われている現状にあり、環境への配慮が急がれる今日では発電水利権についても従来のやり方を見直すべき(電力業界としてどこまで踏み込めるか)。

7.小規模な水力発電の電力でも風力や太陽光と同じように売電できるか。
→RPS法により、電気事業者に対して、販売電力量の一定割合以上の新エネルギー(たとえばダムを伴わない1000kw未満の水力等)の利用(自ら開発、他社から購入)の義務が課せられている。

8.水利権の見直しについては河川管理者より上位の方での調整が必要なものもあるが、なるべく整備計画の中で取り上げていくことに期待。

9.この流域委員会では、今ある法律の枠内で動くのではなく、社会情勢や地域のニーズに合わせて地域単位で改善に向けた議論を展開していくことが必要。

10.アユの盛漁期における冷水放流や濁水長期化は漁業関係者にとって深刻な問題。地域(地区)に即した対応により改善していくべき。

11.地球レベルでの環境変化(地球温暖化等)により、気象条件さらには自然環境にまで影響していることを認識することが重要。いろいろな立場の人が互いにこの実態の理解に努め、改善していくべき。

12.既定の規則(法律等)にとらわれることなく、"どのようにして川に水を戻しながら発電をしていくか"について関係者が互いに理解を深め、強調し合いながら取り組んでいくべき。

13.水力発電設備の更新にかかる費用を考慮した上で、場合によっては水力発電に置き換わる発電方法を検討することも必要。これには電力の安定供給と環境保全を視野に入れた幅広い検討を行うべき(発電事業者への提案)。

14.水力発電は、他の発電よりも"クリーン"であるが、「"クリーン"="環境に優しい"」 の関係にはならないと思う。


循環型エネルギーの説明図 今後の動向・説明図

 

3.河川の維持流量について

「河川の維持流量」に係わる資料について河川管理者から説明を行いました。説明した内容は以下に示すとおりです。

@ 水資源の現況
A 水利用の現況と課題
B 水需要の見通し


以上の説明を実施した後に意見交換を行い、次のような意見や質問が出されました。



15.この流域委員会では、維持流量の具体的な数値を個別に議論するのではなく、まずは項目の理解と課題の共通認識を持つことが重要。エネルギーあるいは環境のために自然からの恵みをいかに有効利用していくか、について議論を深める場であるべき。

16.維持流量の設定にあたっては、自然流況のように季節毎に"メリハリ"をつけることも重要。

17.画一的な方法によって算出される必要流量と人がイメージするよい景観としての必要流量とにギャップを感じる。

18.命の循環という生態系のシステムを踏まえた上で維持流量を設定することが重要。人の五感で見た景観に対する感覚を大事にしていくべき。

19.流域の問題を考えるにあたって、自然再生法に基づいた新しい考え方を根付かせていくべき。

20.水利権の決定手順について知りたい。それに対して流域委員会がどのようにアプローチするかが大きな役割となる。

21.物理的条件から算出される必要流量と生態系から必要とされる流量とをすり合わせていくことも、この流域委員会の中で努力していくべき。


検討手順(魚類の必要流量) 代表箇所の横断