みんなの水を考える。

湖や池で、ある種のプランクトンが異常に増えて、水面の色を変えてしまう現象を「水の華」と呼びます。なかでも、赤味を帯びて見える場合は、海の赤潮に似ていることから淡水赤潮といい、藍藻類のプランクトンによって緑の粉を散らしたように見える現象をアオコといいます。琵琶湖では、昭和52年に初めて大規模な淡水赤潮が発生し、それを契機に人々の水質への関心が高まり、昭和54年には琵琶湖富栄養化防止条例が施行されました。近年、琵琶湖の水質は一定の改善傾向を示し、以前と比べると淡水赤潮やアオコの発生も少なくなっています。しかし、プランクトンの異常発生については、まだまだ未知の部分も多く、現在も各分野で懸命にモニタリングや研究が続けられています。

プランクトンって何だろう。

淡水赤潮やアオコが、植物プランクトンの大量発生によって起こることは広く知られていますが、プランクトンとは、一体どのよを漂うクラゲもプランクトンの仲間なのです。本来、プランクトンとは魚のように自ら泳ぎ回って行動するのではなく、水中を浮遊する生物をさします。

したがって、体長1.5メートルもある越前クラゲからわずか1ミクロンのピコプランクトンといわれる微小なものまで、大きさは千差万別。さらに、その中でも体の中に色素をもって光合成を行う植物プランクトンと外部から栄養分を吸収する動物プランクトンに大きく分けることができます。

淡水赤潮発生の鍵を握る水温や天気

琵琶湖の淡水赤潮の原因となるのは、ウログレナと呼ばれる黄色鞭毛藻類の一種です。この植物プランクトンは長さの異なる 2本の細かい毛のようなもの(鞭毛)を細かく動かしながら移動します。また、細胞の中に眼点という光を感じる組織を持ち、光に向かって移動する性質(走光性)があるため、風が穏やかな晴れた日には水面に集まる習性を持っています。そのため、5月中旬から下旬のポカポカした陽気によって、水温がウログレナの増えやすい水温(15〜20℃)まで上昇し、風の穏やかな晴天が続くと淡水赤潮が発生しやすくなるのです。また、アオコについてはミクロキスティスやアナベナなど、藍藻類に属する10種類の植物プランクトンが原因となって発生します。これらのプランクトンは、いずれも体内に浮き袋のようなものを持っていて、水面にプカプカと浮かぶため、湖の中層で増えたものもすべて表面に集まるため緑のペンキを流したような状態になるのです。

●淡水赤潮
淡水赤潮
黄色鞭毛藻類の一種であるウログレナ類という
プランクトンの大量発生によって起こる淡水赤潮。
●アオコ
アオコ
ミクロキスティス、アナベナ等、藍藻と呼ばれる
植物プランクトンによって起こるアオコ。

実害を軽減するための情報ネットワーク。

淡水赤潮やアオコが発生すると湖の美観が損なわれるだけではなく、特有の生ぐさ臭が発生し、漁業や浄水場での水処理に大きな影響を与えます。そこで、滋賀県や国土交通省、漁業協同組合をはじめ、さまざまな機関や組織によってきめ細かな情報収集や分布調査が行われています。さらに、淡水赤潮やアオコに関する情報は、滋賀県環境政策課を通して、いち早く各方面に伝達され、実害を最小限にくい止める対応策がとられています。このような情報ネットワークによって、現在では淡水赤潮やアオコによる大きな被害はほとんど発生していません。

連絡系統図
淡水赤潮が発生した時の連絡系統図

アオコとたたかう「赤野井湾流域協議会」。

かつては、夏になるとアオコが頻繁に発生することで知られていた赤野井湾。平成8年、地元住民の手によって湾の水質浄化を図ろうと発足したのが「豊穣の郷 赤野井湾流域協議会」です。

協議会では、近隣の河川や水路にゲンジボタルやシジミを呼び戻すことを目標に掲げるとともに、市内100カ所のチェックポイントで水質調査を実施。その結果を”水環境マップ“にまとめ、各戸に配布するなど、積極的に活動を続けています。会長の寺田順一郎さんに協議会の運営についてうかがいました。

「赤野井湾のアオコについては、計らずも協議会発足の翌年から発生が大幅に減少しました。これは、守山市が以前から進めていた下水道整備が功を奏したものと私は考えています。結局、水質浄化や自然環境の保全というのは、ひとりひとりの気持ちの問題なんですね。言葉でいくら伝えても難しい。小さな頃に遊んだ美しい湖や河川を子供や孫の世代に残してやりたい。そのためには今のままではいけない。

そんな気持ちを呼び起こすことがいちばん大切です。下水道や浄化設備など、物理的な条件が整いつつある今、地域の方々の心に火をつけて、環境意識をどんどん養っていただくことが、これからの課題だと考えています。」

寺田順一朗さん
赤野井湾を背景に語る「豊穣の郷 赤野井湾流域協議会」会長、寺田順一朗さん。

水環境マップ
各エリアの水質調査の結果を掲載。さらに、会の活動内容やホタルの発生状況が詳しく記されています。

水環境マップ 琵琶湖

問い合わせ先:守山市役所環境課内「豊穣の郷 赤野井湾流域協議会」事務局 電話 077-514-1166

淡水赤潮、アオコのない琵琶湖をとりもどすには。

各家庭から河川や琵琶湖に流入する窒素やリンなどは、淡水赤潮やアオコの原因となるプランクトンの栄養源となります。調理クズや残飯、油の処理などに注意し、水にやさしいエコライフを心がけましょう。

平成14年度から滋賀県によって本格的にスタートされる新しい試み、家族ISOプログラム推進事業(仮称)をご紹介しましょう。これはISO14001の考え方を手本に、各家庭に向けて自然環境に負担をかけない暮らし方を提案しようとするものです。チェックシートをもとに家族全員がエコライフに挑戦し実践に成功した家庭には、認定証が発行されます。このように家族のひとりひとりが環境を考えた暮らしに積極的に取り組むことは水質浄化への大きな一歩となることでしょう。

※ISO14001とは、国際標準化機構(ISO)が進める環境管理システムと環境監査に関する国際規格のひとつです。

問い合わせ先:滋賀県琵琶湖環境部エコライフ推進課 電話077-528-3492

イラスト イラスト
調理クズ、残飯の処理 油の処理

もどる進む